炉心・燃料・機器の合理的な熱流動評価・開発手法調査専門委員会
炉心・機器熱流動評価分科会
第3回委員会議事録

日時:平成18年6月26日、13:30-17:00
場所:東京電力 技術開発センター 共用第一会議室
出席者:片岡勲(阪大・主査)、上遠野健一(日立製作所)、笠原文雄(JNES)、日引俊(京大)、大川富雄(阪大・記録者)、上原靖(NUPEC)、坂場弘(三菱重工)、米田公俊(電中研)、松浦敬三(原子燃料工業)、阿萬剛史(TEPSYS)、堀田亮(TEPSYS)、吉田啓之(JAEA)、藪下幸久(CSAJ)、大森修一(東電)、後藤正治(東電)、村瀬道雄(INSS)、湊明彦(日立製作所)

1.委員の交代等
 片岡主査より委員の交代およびオブザーバー参加者の紹介があった。交代委員およびオブザー バー参加者は下記の通り。
・委員交代:秋本肇→吉田啓之(JAEA)、荒木和博→上原靖(NUPEC)
・オブザーバー参加:上遠野健一(日立製作所)、阿萬剛史(TEPSYS)

2.高性能蒸気インジェクタ(SI)による革新的簡素化原子力発電プラントの技術開発 
 東京電力・後藤正治氏より、経済産業省の公募型研究として東京電力が東芝および大学と共同 で実施した高性能SIの開発に関する技術開発の成果について紹介がなされた。ビデオを用いた技 術開発課題の全体紹介の後、筑波大学、東京大学、大阪大学の実施した実験研究、東工大、茨城 大の実施した解析的研究等の要素技術の開発経緯について説明がなされた。水ノズルから噴出さ れた水噴流の表面上に発生する擾乱波のPIV計測における画像データ処理や実験技術等について議 論を行った。さらに、高性能SIを用いたシステム検討結果について説明があり、ABWR低圧給水系 の体積及び重量を約1/3にまで低減できる可能性があること、静的格納容器冷却系および静的炉心 注水系にも十分に適用可能であることが述べられるとともに、シビアアクシデントフリー化概念 が示された。この他、(1)火力発電所など、原子力発電所以外でも低圧給水加熱器としてSIは適用 できる。イタリアのSIET社で行った試験では、実機の火力発電所の蒸気を用いて行ったこと、 (2)SIを給水加熱器に代替したとき、定常時においても復水ポンプを完全にSIで代用を考えている ことはなく、復水に問題がないように系統を設計していること、(3)CIP法、CIVA法に基づく数値 解の妥当性等について、今後もう少し検討してきたい旨の報告を行った。

3.気液界面積濃度について
 京都大学・日引俊先生より、気液界面積濃度に関する研究の概観と研究紹介、特にActive nucleation site density modellingおよびBubble lift-off diameter modellingに関する研究に ついて説明があった。講演の主な内容と質疑応答を以下に示す。
(1)界面積濃度(IAC)輸送方程式の必要性:例えば、気泡流からスラグ流に遷移するときのボイド 率は15-30%と一定ではないことが実験的に知られており、流動様式線図によって流動様式遷移を 正確に予測することはきわめて困難である。したがって、流動様式線図を必要としない二相流解 析手法が必要であり、IAC輸送方程式はその有力な候補の一つである。
(2)二群界面積濃度輸送方程式:気泡の合体や分裂等の生成項のモデル化を中心に、IAC輸送方程 式の解説が行われた。この中で、特に沸騰核密度、気泡生成周期、離脱時気泡径等のパラメータ ーの重要性とモデル化手法が述べられた。
(3)沸騰核密度のモデル化:沸騰核密度をモデル化する上で、接触角やキャビティサイズ等の加熱 面性状の影響を考慮することの必要性が強調された。沸騰核密度をモデル化する上では壁面過熱 度および接触角が最も重要なパラメーターであるが、既存の相関式では壁面過熱度の指数や接触 角を考慮する上での関数形が大きく異なる。これらの影響を合理的に解釈する相関式の説明があ り、予測値は幅広い実験データとよく一致する結果を与えることが示された。
(4)離脱時気泡径:水平方向で気泡に作用する力のバランスで決まる。気泡の離脱を引き起こす力 がせん断揚力であると仮定して導出したモデルが示された。上記の講演に関連し、凝縮流や環状 流の解析に適用する場合の課題等について議論を行った。

4.強制対流サブクール沸騰素過程に関する実験的考察
 大阪大学・大川委員より、強制対流サブクール沸騰の可視化実験について説明があり、加熱壁 面で形成された蒸気泡の挙動と離脱挙動に関する考察結果、発泡核密度や気泡サイズ等の微視的 パラメーターとボイド率との関係等について考察した結果が示された。気泡の離脱を決定するメ カニズム、正味の気泡生成に関する既存の相関式の物理的解釈等について議論を行った。

5.次回講演内容の紹介
 TEPSYS・堀田委員より、次回委員会の講演テーマ案である「超高出力密度炉心ABWRプラントの 実用化に向けた技術開発」について簡単な説明があった。経済産業省の実施する革新的実用原子 力技術開発費補助事業として実施中の本研究開発課題とPIRT(Phenomena Identification Ranking Table)作成計画の概要について述べられた。