第3回「原子力プラントにおける火災や燃焼化学反応を伴う熱流動問題」研究専門委員会

日時  平成13年11月19日(月) 東京工業大学原子炉工学研究所会議室 (23名)

(1) 再処理施設における火災・爆発事故例とサイクル機構の取組み  野尻委員(JNC)、三浦 昭彦氏(JNC)
 標記タイトルの下に、(1) 再処理施設における火災・爆発事故、(2) 動燃アスファルト固化処理施設における火災・爆発事故、(3) 火災・爆発安全性に関するサイクル機構の取組み、の三項目に焦点を当てた発表がなされた。
(1) 1950年代より報告されている火災事故は約40件で、ほとんどが米国で発生している(ロシア、中国の情報はほとんど出てきていない)。うち、化学物質が原因のものが16件、機器故障などによるもの8件、その他となっている。これらの事故概要の後に、比較的最近の事例として、ロシアTomsk-7 (1993年4月6日)および米国ハンフォード(1997年5月14日)について比較的詳細に内容が報告された。前者は槽類換気系バルブの故障により、劣化溶媒と濃硝酸が反応しガス爆発に至った。セルの天井、壁、ガラス窓が破損し、敷地外に放射性物質が漏れた。後者では、硝酸と硝酸ヒドロキシルアミンが反応して可燃性ガスが発生し、貯槽の蓋を吹き飛ばし、ドアと屋根を破損した。
(2) ) 動燃アスファルト固化処理施設の事故概要、火災および爆発の発生要因の検討、事故の教訓が解説された。教訓は以下の四項目である。枢要な工程機器の挙動確認(運転条件が変更されたが、それに伴うR&D検討が不足していた可能性がある)、処理対象物の取り扱い・化学挙動に対する理解が不足していた、技術情報の継承・伝承にやや問題があった、国際情報の収集と利用における問題(ベルギーの先行事故例を十分に参考にすべきであった)。
(3) 最後に今後の話として、サイクル機構の火災・爆発安全性に関する取組が紹介された。化学物質の熱的安定性の確認、換気系機器の健全性の評価、複雑空間内における爆発特性試験、数値解析手法の確立に邁進しているその内容が紹介され、今次の事故を教訓として将来の安全確保のための方策に邁進する姿が印象づけられた。


(2)水素生産の安全性ー大規模水素応用への安全リスク (株)日立製作所 唐澤 英年氏
  原子力施設を利用する水素生産の安全性の検討として、水素の性質、液化水素の取り扱い、水素燃焼、安全距離、確率論的安全リスク評価について説明があった。水素の保存・輸送の形態としてスラッシュ(液体と固体の均一混合物)が着目されており、輸送効率や気化ロスの点で改善が期待されるため特性が研究されており、取り扱いについては、材料の水素脆化が着目されている。燃焼に関わる研究では、液化水素の蒸発挙動、火炎加速によるDDT、爆轟に関する実験、解析が行われている。解析コードは2DのCFDコード、3DのCFXコードなどがある。高圧ガスや液化ガスとしての水素の取り扱いは安全に行われており、更なる安全向上の対策としては、材料及び溶接法の最適化がある。正しく扱うことにより、水素は化石燃料の代替となり得る。

以上