第4回「原子力プラントにおける火災や燃焼化学反応を伴う熱流動問題」研究専門委員会

日時  平成14年7月23日(火) 東京工業大学原子炉工学研究所会議室 (31名)

(1) 中部電力(株)浜岡原子力発電所1号機における配管破断事故について 事故の背景と再発防止  大嶋 巌氏(原子力安全・保安院)
 平成13年11月7日に生じた中部電力(株)浜岡原子力発電所1号機の余熱除去系蒸気凝縮系配管が破断した事故に関し、事故の背景と再発防止策について発表があった。
 本配管破断事故は、原子炉蒸気中の水素と酸素が徐々に蓄積し、高圧注入系定期作動試験によって生じた圧力変動により高温蒸気が流入し、配管内に付着していた貴金属の触媒作用もあり、水素と酸素が着火し、燃焼の伝播により急激な圧力上昇が生じて配管が破断したものと推定した。NUPECが実施した解析結果を踏まえて、中部電力の原因究明結果は妥当と判断した。また、今回の事故は原子炉の安全に直ちに影響を与えるものではないと判断した。
 再発防止対策として、ガスの滞留が防止できる設備変更や定期的なガス除去操作と温度計設置による監視を行う。余熱除去系蒸気凝縮系配管に関しては、過去に使用した実績がないことや最近のプラントでは配置されていないことから、配管の撤去と当該配管の分岐部に弁の設置を対策とする。
 事故の背景としては、当該配管の改造に際し、改造前の設計検討では、水素と酸素の蓄積に着眼する好機であったが、改造の目的であるリークについての検討が中心になってしまったと推測される。この事故の経験を踏まえ、技術の品質保証・品質管理の充実強化が求められるとともに、水素関連の技術指針の整備を関連する学協会に期待する。

(2)中部電力(株)浜岡原子力発電所1号機における配管破断事故について 配管破断事故の概要 中部電力(株) 仲神 元順氏
  浜岡原子力発電所1号機において、余熱系蒸気凝縮系配管が破断した事故の経緯について説明し、事故後の現場調査として、配管破断状況および周辺設備の破損状況・配管の周長の測定結果、配管破断部と破片の調査として、テストピースによる破面観察の結果の説明があった。また、配管内部滞留物の調査として、配管内の滞留ガスの成分の調査結果が示された。
解析・試験による調査として、非凝縮性ガス蓄積量の推定を行うためのガス蓄積試験、着火プロセスの確認を行うための圧力変動試験と着火試験の結果が示された。ガス蓄積試験では配管頂部の温度低下によりガスが蓄積することが確認された。圧力変動試験では水平配管から立下る配管の上端部に境界層が位置する場合は、温度変化が大きく蒸気が非凝縮性ガスに流入するものと考えられる。着火試験では、高温蒸気による着火は認められなかった。配管内の残留水貴金属の濃度を調査した結果、当該配管には貴金属が付着していたものと推定され、着火試験でも貴金属を付着させた結果、蒸気による着火が認められた。試験の結果を受けて、燃焼伝播解析/配管構造解析を実施した結果、破断部上流側配管の変形量は、ガス蓄積長さを約6〜7mとした場合に、実機の測定結果と概ね合うことを確認した。再発防止対策として、余熱除去系蒸気凝縮系配管については、水素を蓄積させない対策を行う。

(3)中部電力(株)浜岡原子力発電所1号機における配管破断事故について 原因究明の解析   中田委員
  配管破断事故の調査の一環として実施した燃焼伝播解析と配管構造解析について説明があった。燃焼伝播解析の目的は、配管内に蓄積した非凝縮性ガスが着火した際の、燃焼の伝播及び配管内に発生する圧力変化の挙動の把握であり、解析手法として汎用三次元流体解析コードSTAR-CDを使用し、化学反応を伴う三次元圧縮性流体を考慮した解析を実施した。配管構造解析の目的は、燃焼伝播解析で得られた圧力条件を基に、当該配管部に発生するひずみを求め、当該破断の可能性及び上流側配管の変形の評価であり、解析手法として、汎用有限要素法解析コードABAQUSを用い、構造物の動的な応答を考慮した非定常弾塑性解析をおこなった。燃焼伝播解析によると、着火後に急速に圧力が上昇し、燃焼による圧力波は、配管頂部の水面で反射した後、配管上流部に向かって減衰しながら伝播した。配管内圧力は破断部で最大となりガス蓄積長さ約7mの場合では、約270MPaに達した。配管構造解析の結果、ガス蓄積長さが約6〜7mとした場合に、実機の損傷状況と概ね一致したことから、この位置近傍まで蓄積した非凝縮性ガスが着火・燃焼し、それに伴って発生した圧力波により、当該エルボ部が破断に至るとともに、破断部上流側配管が変形(膨張)したものと推定した。

(4)中部電力(株)浜岡原子力発電所1号機における配管破断事故について 確認解析   原子力機構 内藤 正則氏
 (財)原子力発電技術機構(以下NUPEC)が原子力安全・保安院の依頼を受け、第三者機関として実施した余熱除去系蒸気凝縮系配管における配管内の流体挙動、水素燃焼挙動及び配管の変形挙動に関する解析結果の説明があった。配管内の流体挙動と水素燃焼挙動の解析は、RELAP-5コードとNUPECで開発したIMPACTコードを用い、水素燃焼時の配管内圧力挙動を境界条件とする配管の変形挙動はAUTODYNコードを用いている。解析結果として、サイクル運転開始後6000時間で配管内の滞留水面から上流側に6.9mの長さにわたって水素・酸素ガスが高濃度で蓄積すること、総括反応モデルによる燃焼と渦消散モデルによる反応速度に基づく水素燃焼解析により配管内で爆轟が発生し、滞留水面近傍のエルボ部において最高圧力300MPaとなることが結果として得られた。この圧力挙動に基づく配管変形の動的応答解析では、滞留水面上部の配管内圧力が最高になる部分で破断にいたった。

次回 9月24日(火)

以上