第5回「原子力プラントにおける火災や燃焼化学反応を伴う熱流動問題」研究専門委員会 

日時 平成14年9月23日(火) 東京工業大学原子炉工学研究所会議室 (23名)

(1)「固体金属ナトリウムの自然発火現象」について  吉田 英一氏(JNC)
 金属ナトリウムは原子力分野や化学工業分野などで多く利用されているが、常温下(固体金属状態)での自然発火現象に関する知見が乏しく、そのメカニズムに関し実験的に解明することを目的とした。実験では、(1)固体金属ナトリウムの自然発火性の確認と、(2)自然発火時間に関する検討の2点に着目した。実験(1)では、大気雰囲気下で金属Naを、紙(乾き/湿りキムタオル、コートボール紙)及び酢酸ビニルなどの上に載せ、化学的な反応終了までの挙動を観察した。その結果、酢酸ビニル上のみで自然発火が観測され、紙上では観測されなかった。その要因は、ビニルの場合、大気中湿分とNaとの反応により生成されるNaOH潮解溶液が保温効果の役目をすることによりNaが溶融・着火、さらに水素ガス燃焼が生ずる一方、紙の場合、保温効果の役目を成すNaOH溶液が紙に吸収され反応熱の蓄積が抑制されるため、と推察した。実験(2)では、半密閉ビニル内に金属Naと水湿りキムタオルを封入し、アルコール湿りキムタオル有無による発火時間の変化を調べた。アルコール蒸気有りの場合自然発火時間の退延若しくは未着火となる観測結果が得られたが、これはNaアルコラート生成による反応速度低下が要因と推定される。

(2)ナトリウムプール燃焼の数値シミュレーション 堂田 哲広氏(JNC)
 ナトリウムプール燃焼及び生成エアロゾル挙動に対し、機構論的モデルに基づく現象解明を目的に、化学反応を伴う数値流体解析コードFLAME及びSPOOLを開発し、既存Na燃焼実験との検証解析を通じて、燃焼反応・エアロゾル挙動を評価した。この研究は、従来解析的なパラメータであった反応生成物組成比(Na2O:Na2O2)とエアロゾル放出割合を、化学平衡反応モデルの導入および流動・反応場の数値流体解析により評価可能とした。FLAMEコードにより化学反応モデルのNa拡散火炎への適用性を検証し、SPOOLコードでナトリウムプール燃焼の流動場及びエアロゾル輸送計算を実体系で実施した。火炎の振動、平均燃焼率、火炎温度、火炎高さ、エアロゾル放出割合を実験値と比較し、計算結果の妥当性を示すと共に、開発した手法により従来の解析的パラメータが数値解析的に求められる事を示した。

(3) 本研究専門委員会に関するアンケート
 本委員会の期間延長が主査より提案され、出席委員により了承された。(欠席者に対してもアンケートによる意見募集が為される。)また委員会活動報告について、報告書形態による総括とすることが提案されると共に、来年度秋の原子力学会において研究報告セッションを企画している旨、説明された。

以上