第4回「多次元二相流構成方程式に関する評価」調査専門委員会議事録
日 時:平成13年12月26日(水)、13:30〜17:00
場 所:蔵前工業会館803会議室
出席者:
片岡(阪大)、森(東電)、秋本(原研)、阿部(筑波大)、池田(NUPEC)、大貫(原研)、岡本(東大)、飛田(JNC)、冨山(神戸大)、松浦(原燃工)、湊(日立)、宮越(関電)、村瀬(INSS)、藪下(CSAJ)、堀田(テプコシステムズ)、大川(阪大、記録者) 以上16名
配布資料
2−1 議事次第
2−2 気液二相流の複雑さと解析技術
議事
1.二相流解析高度化に対する幾つかの取組み(冨山委員)
(1)界面積濃度(IAC)輸送方程式の実用性検討
IAC輸送方程式の特性を実用的な側面から検討した結果が報告された。IAC以外にも抗力モデルの高度化や基礎式の多流体化が必須であること、IACソースタームに生じ得るゼロ割の問題、モデルの複雑さ等が指摘された。特に、IAC輸送方程式を多流体モデルと組み合わせてボイド率測定実験の解析を行った結果を提示し、特徴的な傾向を再現できないケースもあることが述べられた。これらを総合すれば、実用上の観点では現状のIAC輸送方程式は今後さらに改良の必要があり、特にモデルの複雑化に伴う汎用性の低下が危惧されることが強調された。
(2)気泡追跡法の現状
気泡追跡法にはOne-WayとTwo-Wayがあるが、流動様式遷移などの解析には計算効率の観点でOne-Way気泡追跡法が有利であることが述べられた。また、気泡形状や液速度場に関するモデル化の現状が述べられ、これらにより、管内二相流のボイド率や差圧を変動値も含めてきわめて良好に予測可能であることが示された。
(3)二流体モデル相関式応用上の問題点と解決方法
諸構成式の開発では気相の速度として気泡の重心移動速度が用いられるが、これは二流体モデルで使用される相平均速度とは異なる。この結果、二流体モデルに基づく解析では重大な誤差が引き起こされる場合があることが指摘された。このための解決策として、質量保存則を気泡の数密度を用いて記述する方策が有効であることが述べられた。
(4)(N+2)-Field Modelの開発状況
本モデルは、二相流を二つの連続相とN個の分散相として捉える解析手法であり、きわめて広い範囲の二相流動に適用可能である。また、気泡塔などを対象とした幾つかの解析例により、本モデルの有効性が示された。
2.気液二相流の複雑さと解析技術
2.1 プロジェクトの概要と解析技術開発(湊委員)
二相流はきわめて複雑な様相を呈するが、この複雑さこそが二相流の本質であるとの観点にたった標記プロジェクトの概要が紹介された。二相流の複雑さを表現する空間的非均質性および時間的間欠性といった物理量を正しく取り扱うことで、解析結果の信頼性向上が期待できることが述べられた。二相流の解析モデルは平均化モデルと界面モデルに大別できるが、各々長所と短所を併せ持つ。このため、これらを融合した拡張二流体モデルの有望性が述べられ、本モデルに基づく解析例(ダム積の崩壊、CCFLなど)が示された。これらは実験データと良好な一致を示しており、モデルの妥当性が確認された。また、解析により二相流の複雑さをどの程度正確に再現できているかを調べるため、カオス統計の応用可能性が述べられ、このために予定している実験計画の概要が紹介された。実験は鉛直円管内気液二相流を想定しており、計測法としてはX線CTおよびワイヤメッシュ法が併用される。本プロジェクトで使用予定の二相流モデルは、二相流の空間的非均質性および時間的間欠性を十分に表現可能であり、これらの実験データは二相流解析法の高度化にきわめて有益と考えられることが述べられた。さらに今後の方向性として、拡張二流体モデルと粒子法(MPS法)を組み合わせた二相流解析手法が解析例とともに述べられた。
2.2 気液二相流のカオス統計(産総研・黒田雅治氏)
カオス統計の基礎理論について整理した後、ワイヤメッシュ法による鉛直管内スラグ流の断面平均ボイド率をカオス統計によって試行処理した結果が示された。現時点では、明確なカオス的特長を抽出するには至っておらず、二相流現象の複雑さを再認識する結果となった。このため、今後有望と考えられる統計処理手法の高度化について述べられた。これに関連し、カオス統計の環状流への適用性、ウェーブレット解析の可能性等について議論がなされた。
3.その他
本委員会の今後の進め方に関連して、一次元解析に対する多次元解析の優位性、原子力発電所関連機器における設計への二相流解析技術の反映手法等について議論を交わした。これに関する主な個別意見を以下に列挙する。
—
実験が十分になされている条件であれば、むしろ一次元解析の方がより正確な予測を与える可能性は十分にあることを認識しておかねばならない。
—
多次元解析の意義は、構成式への依存度を低減し、解析コードの汎用性・外挿性を高めることにあるのではないか。
—
一次元解析に対する多次元解析の優位性を定量化できればよい。特に、機器設計時における保守性をどの程度低減できるかについて、よく考察する必要がある。
なお、次回委員会は来年3月〜4月頃の開催とし、サブチャンネル解析について調査・検討を行うこととした。
以上