第5回「多次元二相流構成方程式に関する評価」調査専門委員会議事録

日 時:平成14年5月8日(水)、13:30〜17:00
場 所:蔵前工業会館803会議室

出席者:
片岡(阪大)、森(東電)、秋本(原研)、大貫(原研)、飛田(JNC)、奈良林(東芝)、ニノ方(東工大)、松浦(原燃工)、湊(日立)、宮越(関電)、村瀬(INSS)、藪下(CSAJ)、堀田(テプコシステムズ)、中塚(原研)、大川(阪大、記録者) 以上15名

配布資料
1.議事次第
2.サブチャンネル解析の現状と課題
3.NSCAコードのBWR燃料適用における期待と課題
4.低減速スペクトル炉の限界熱流束の評価
5.標準案件のアンケート調査用紙

議事
1.サブチャンネル解析の現状と課題(ニノ方委員)
 燃料集合体の最適設計・安全性を評価する上で、サブチャンネル解析(SCA)は少なくとも現時点において信頼のおける唯一の解析ツールである。本講演では、SCAの基礎理論を簡潔にまとめて提示するとともに、報告者等が鋭意開発を進めている機構論モデルに立脚するSCAコード(NASCA)で使用されている構成式(クロスフロー、液滴発生率、液滴付着率、スペーサー効果等)が述べられた。バンドル試験データとの比較により、サブチャンネル流量、限界出力、リウェット等の燃料集合体の安全性を考える上で最重要となる物理現象がNASCAコードにより妥当な精度で予測可能であることが示された。さらに、さらなる構成式の高度化が必要と考えられる物理現象および現在実施中の項目が紹介された。本講演に関連し、乱流混合およびスペーサー効果の考え方について議論がなされた。

2.NSCAコードのBWR燃料適用における期待と課題(堀田委員)
 NASCAコードのさらなる高度化のため、モデル検証の手順と構成式の高度化を図った例が示された。SCAで使用される構成式は、大きく液滴過程、スペーサー過程、クロスフロー過程、リウェット過程に関するものに分類できる。各過程を記述する構成式を変更した場合に、その妥当性検証のために必要となる問題設定が述べられた。液滴過程やクロスフロー過程をボイド率の関数とする構成式高度化例とその妥当性が示され、および炉心計算との結合解析例が提示された。また、特にクロスフローの評価法に関連して、さらなる高度化を図る上で有望と考えられる物理現象の解釈法が述べられた。クロスフロー、サブクール沸騰、環状流遷移地点における液滴流量比の評価法に関して、より正確な予測を行うための手法について議論が交わされた。

3.低減速スペクトル炉の限界熱流束の評価(中塚氏)
 低減速スペクトル炉では流路の等価直径が既存炉よりも小さいため、SCAの適用性低下の懸念がある。本講演では、稠密格子における限界出力の実験結果とSCAによる限界出力予測値との比較が示された。実験では、圧力、サブクール度、質量流束、熱流束分布などのパラメーターを幅広く振っているが、中でも質量流束の影響によりBTを発生させるメカニズムが変化し得ることが強調された。SCAによる予測では、BT発生位置の予測に不明確な点も残されるが、界面熱伝達率モデルの改良により限界出力を良好に予測可能であることが述べられた。さらに、大型炉心を含む今後の試験計画の概要が示された。本報告に関連し、照射変形による燃料棒のギャップの保持特性、解析における乱流混合係数の妥当性等について議論がなされた。

4.その他
 日本原子力学会標準委員会、発電炉専門部会のアンケートによるニーズ調査求めに応じ、森幹事よりなされたアンケートへの回答内容が紹介された。二相流解析における構成式の標準化は重要かつ本調査専門委員会の方向性とも合致するものであり、また、当委員会設立時に、標準化になるくらいまでまとめて欲しいとの当時の班目熱流動部会長から要望があったことも踏まえ、構成式の標準化作業を前向きに進めることが確認された。

以上